2012/11/07
社会の正体
もしもある朝すべての記憶がなくなっていたらどうしますか?どこで生まれて、誰と知り合って、どういう人生を送ってきたのかを、まったく覚えていない。誰と結婚し、どこに住んでいて、どういう仕事をしているのかもわからない。親も恋人も兄弟も近所の人も誰一人記憶にない。もしもそうなってしまったら、あなたを社会につなぎ止めておくものは周りの人間の記憶しかありません。あなたは覚えていないかもしれないけれども、あなたの名前や住所や勤め先や銀行の口座やローンの残額やらを覚えている人たちがいる。だからたとえあなたの記憶が無くなったとしても、あなたには家族を養う責任があるし、ローンを払い続ける義務もある。あなたから見た社会は断絶していても、社会から見たあなたは何も変わらないのです。借金は減らないし仕事の失敗も帳消しにはされない。でももしも、すべての人間の記憶がなくなってしまったらどうですか。もはや誰も社会につなぎ止めてくれる人はいない。みんなバラバラ。義務も権利も責任も何もかも消滅してしまうのです。そう考えると、社会というのは人間の記憶の集合体に過ぎないのだなと思うのです。