2013/04/10
自分と引き換えにしたもの
人間というのは比較することが大好きな生き物ですよね。いや、好きというよりは性質でしょうか。持って生まれた悲しき性とでも言いましょうか。とにかく比べずにはいられない動物なのです。比べることによって優越感を味わったり、比べることによって落ち込んでしまったり。「他人と比べてもしょうがないよ」なんて言う人もいますけど、これは持って生まれた性質だからどうしようもないです。魚が水の中で生きていくように、鳥が大空を羽ばたくように、人間は比べずにはいられない生き物なのです。人には出来ることと出来ないことがあります。早く走れる人が泳げなかったり、力が強い人が不器用だったり。天は二物を与えずなんていいますが、それでもたったの二つです。すべての人間は出来ないものを山ほど抱えて生きています。その出来ないものをどうしてわざわざ他人と比べる必要があるのでしょう。たぶん人間は「自分」を得ることと引き換えに、悲しき性格を身につけてしまったのではないでしょうか。自分の形を正確に把握するためには、自分を自分以外のものと比べるしかない。しかも出来るだけ自分と近いものと比べる必要がある。比べることによって境界線を明確にし、自分は自分であると認識するためです。自分。自我。オリジナリティー。それと引き換えに私たちはきっと何かを失ったのです。