2014/07/23
生き様と死に様
私の父は三年前に他界しました。白血病でした。父が最後に家族に残した言葉は「よろしく」と「なかよく」でした。「お母さんをよろしく」「兄弟なかよく」「嫁さんともなかよく」それだけです。父はとにかく変わった人でした。とても孫たち(私の子供)を可愛がっていたのに、病床に臥せってからは一度も会おうとしませんでした。子供たちは「どうして会わせてくれないんだ」と私に詰め寄ってきましたが、それが父の意思だったのです。いったいどうしてなんだろうと、そのときの私には分かりませんでした。でも今は何となく分かります。父はきっと死に様ではなく生き様を残したかったのです。可愛い孫たちの心の中に。いつまでも。実家に帰ると母は私に聞いてきます。「お父さんの夢見る?」と。私は父の夢は見ないと答えます。冷たい人ねと思われているかもしれません。でも違うのです。私のまぶたには父の壮絶な死に様が焼き付いて離れないのです。あの強かった父が弱くなり、あのダンディーだった父がボロボロになっていく姿。母はもうすっかりそんなことは忘れて若い頃の父の写真を飾りまくっています。でも私にはまだ無理なのです。今思い出そうとしたらまだ死に様が思い浮かんでしまう。私の夢の中に登場する父はダンディーであってほしい。それが私の願いであり、きっと父の願いでもあると私は思うのです。